三重県 H様 Z2 腰上オーバーホール 完成
昨年の12月より依頼を受けておりましたZ2の腰上オーバーホールになります。
事の発端は走行後に車体の後方を確認するとリアタイヤにエンジンオイルがべっとり。。
当店にドッグ入りとなりました。
早速作業開始です!
オーナー様より分解した状態でお持ちいただきました。
ある程度整備ができる方で40年お乗りになられています!
当時は超格安でZ2が入手できた時代。。。時の流れは残酷です😅
各部チェックしていきましょう!
原因はコレ、ピストンリングの破損でした。
#1と#3が破損していました。
この状態でも普通に走行できてしまうので何とも不思議ですね😅
お次はヘッドですが、数10年前に銅製ガイド交換されていますが、写真で分かるように
偏心しているのが分かります。
当時は鉄製ガイドのラインナップがなく、やむなしで使用されたみたいです。
銅製ガイドは必ず摩耗しガッタガタになります😅
雑誌&無知ショップ等が「熱はけが良くなる!」「熱伝導率が上がってよくなる!」
などの定番フレーズをよく耳にしますが、
あくまで熱負荷のかかるレース、またはサーキットに限る
が前提です。
私はそれでも鉄製ガイドでいきますがね。
ストリートならなおさら、鉄製ガイドでスーパー十分です。
ストップを繰り返すような走りをせず走行風が当たり続ける走りをすれば大丈夫です!
「銅製ガイドに打ち換えましょう!」っていうショップに出くわしたら控えることをお勧めします。
カーボンを除去しました。
バルブも全箇所ベタ当たりの摩耗が激しくフェース研磨では追いつかない状態まで摩耗していました。
新品バルブを使用し組付けます!
シートカットが終わり摺り合わせを実施!
ここが超要!
摺り合わせもバルブの素材により当たりのでやすいモノとそうでないモノとがあります。
摺り合わせした瞬間に分かるのですが作業自体は簡単なんですが見分け方次第で未完のまま
終わる可能性があります😥
最低限のシートカットを施しましたがバルブの沈み込みによる圧縮比の低下を防ぎたい
ので容積測定で既存のピストンで凸容積を測定します!
使用するガスケットやこれから実施する面研等で狙いの圧縮比を目指します。
お次はカムホルダー部の雌ねじ修理です。
Z系はヘッド、ブロック、クランクケースの材質がすこぶるイマイチなのはご存じかと思いますが
このカムホルダー部はド定番!
EX側の雌ねじが痛んでましたのでヘリサートで修理です!
リコイル挿入完了!
これでキッチリトルクが掛かります!
お次はヘッドカバー部のボルト折れ込み修理です。
センターを出して中心をドリルで揉んでいきます!
リコイル用に下穴を開けてヘリサートを挿入すれば完成です。
そしてシリンダーブロックの加工に移りますが、このブロックも例に漏れず全箇所緩んでました。。
純正スリーブを抜いたブロックですがスリーブが運転中に回転した痕跡があるのが分かるでしょうか?
真横に筋キズのようなものが見えると思います。
これは運転中に確実に回っていたんです💧
スリーブの外周にも同じようなキズが付着していました。。
運転中にスリーブが回転するということは、どういうことになるかというと、上下運動中のピストン
を保持しないということになり、ピストンリングに振動がさらに加わり破損に至るというプロセス。
前回分解時よりかなりの距離を走行されたので経年劣化もあったと思いますが。。
Zの純正リングは走行中に破損するという症例はわずかに聞いたことはありますが、その車両も
緩んでいたでしょう。
今回はPAMS製のスリーブを挿入し精度良く加工します!
まずはブロック側の寸法を確認。
他店はどのように加工しているか全く分かりませんが、一般的なバイク屋はこのような
加工現場にはいません😅
段ボールに梱包してハイ出来上がり!がほとんどです。
当店はリアルタイムに加工を目視し寸法の確認やバイト(切削用刃物)の選定、外気温や環境認識
に過敏に反応します!
加工と一言でいうと一瞬で「んなもん簡単にできんのやろ?」みたいな認識の方もおられますが
んな訳あらへんで?
かなりシビアな状況と計測に何度も計測器を矯正したり一発勝負な切削加工などリスキーな状況で実際はやってます!
皆様ご理解ください(ペコリ)
下穴目標値が決まりボーリング加工です!
穴の歪み、倒れ等を矯正し100分台の精度がでました!
全箇所切削が完了しました!
スリーブを挿入します!
背景が変わっていますが挿入完了です!(写真を撮り忘れました)
ライナーを規定寸法まで切削していきます。
勿論ブロック上面はツラ引きしています!
ホーニング加工が終わりました!
今回は純正0.5オーバーサイズで組付けます!
寸法も完璧です!
早速車体に組み込んでいきます!
点検棒を入れて位相ズレを確認。
問題ありません。
Z2はショートストロークによりクランクシャフト自体の剛性が高く、Z1より程度がいいものが
多いです。
自分のZ1にいつかZ2クランクを組み、目一杯排気量を上げた車両を製作したいですね~
ピストンを組付けブロックをドッキング!
ヘッドを組付けてタペット調整を済ませます。
新品のCRを取り付けます。
マフラーを取り付けてエンジン始動!
安定したアイドリングと野太くなったエンジンサウンド!
始動の際オーナー様も横におられ、明らかにサウンドが違うのと始動性が良くなったと。
シンクロメーターでキャブの同調を取ります。
新品にも関わらずズレていましたので調整しました。
試走に行きます!
0.5オーバーサイズなので劇的なトルクアップとまではいかないですが、スムーズで気持ちの良い走り!
オーナー様と一緒に試走しキャブセッティングを煮詰めます。
オーナー様にも乗ってもらい、下からスムーズに扱いやすくなってとにかく乗りやすくなったと
感想をいただきました。
ちょうど車検が切れたので車検を取得し晴れて納車待ちとなりました!
とにかく扱いやすく、振動が明らか減ったと言ってくださいました。
Zライフを楽しんでいただければと思います👍
他にもエンジンオーバーホールのお仕事が立て込んでお待ちのオーナー様にはご迷惑を
おかけしておりますが、いましばらくお待ちください😭
今回も‟エンジンありき”やと感じさせられた仕事でした!
Z2完成です!